☆★☆ RE-J Project立ち上げ5周年記念、AR20DLリリース情報!2007/02/06 ☆★☆
AnalogMan/RE-J共同企画、RE-JオリジナルANALOG DELAYペダルAR20DL/Pro+
市場には、驚くほど多くの歪みペダルが出現し、亜種がどんどん増えているような状況なのに、アナログディレイはこれに比べると(ほぼ)絶滅したのではないかと思えるほど存在しません。アナログディレイは、歪みペダルに比べれば単純に製作することだけでもはるかに大変であり、かつヴィンテージペダルのような味わい深い良い音を引き出すことは極めて困難だと言えます。 限られた市販品の中には、表面的に復刻されていても、残念ながら我々がオリジナルのDM-2,3などに認識する音の次元が再現されていないケースも見受けられます。 このため、限られた数しか存在しない古き良き時代のアナログディレイが高値で取引されてしまいその音を本当に必要とするプレイヤーの手元に逆に届きにくくなってしまいました。
こういった状況もあり、TS-9/808/Silverなどを開発した時の純粋な動機と同様に、自分自身が使いたいと思えるアナログディレイ、自分が開発したモディファイ作品と並べてもストレスなく安心して使える、プレイヤーとしての観点で優れた音を持つ『正しく調整されたアナログディレイ』を新たに作りたかったのです。 ♪アナログディレイにこだわりを持つ理由はこちら♪
このDL-80が市場在庫限りとの情報により、なんとか入手できた3台に調整を施したDL-80/Pro+を製作し、このペダルを真に必要とされる方への(有償)譲渡をしたい旨のお知らせを実施しました。 この際、思わぬほど多くの方からこのコンパクト型アナログディレイへの興味を示していただけたことの重さを受け止め、限定数という不本意な形でのリリースとならないよう、ペダル本体およびBBDと周辺ICの追加入手に注力しましたが、なかなか思うように進みませんでした。 (結局DL-80/Pro+そのものは、いまだにどなたにも提供されていません。)
夜半にストラトキャスターをホテルで組み立て翌日工場を訪問、実は日曜であったにもかかわらず技術者のみなさんを工場に集めてくださったので、みなさんに対して私自らのデモ演奏と共にモディファイ作品の説明をし、米国のAnalogMan/Mikeとの協同による『古き良き時代の音の復刻』の一部と言えるアナログディレイの製作と継続的な提供がどれほど重要な位置づけであるか、どれほど多くのみなさんからの期待を集めていることなのか、なぜ我々が少量のオーダーながら細かい仕様と音にこだわるのかなどを説明しました。
諸外国からの商談がある会社とは言っても、エレキギターを自ら持参し、回路の中身や部品に関する高度な談話を次々と繰り出す私の存在は、『大風電器』のみなさんにとって相当風変わりに見えたことでしょうが、当の本人私は、「なにかいいものはないかなあ」とわくわくしながら休日で稼動していない工場を見学したり、ピリッと辛くておいしい湖北料理を楽しませていただきました。 (実は私、辛い料理は苦手なため、初心者用の辛さにおさえた麻婆豆腐を特別に注文していただいたのですが、それでも、想像以上に充分な辛さ。しかし、本当に味わい深く奥行きのあるおいしい辛さとしびれが印象的でした!)
中国武漢からメールと国際電話で打診した米国のAnalogMan/Mikeさんからも私の構想への支援をとりつけ、翌日大風さんに、『特別注文のアナログディレイ』を提供してほしい、我々のコンセプトは妥協なく正しく調整されたペダルを継続的に提供することなので、諸外国からの買い付けのように一度に大量の注文はできないと思う。 量販品との明確な区別をし、我々のオリジナリティーを高めるために、外観はもとより、実装する部品やIC・回路に細かな指定をしたい、とのとてもわがままなお願いをしました。
ここで補足しますと、OEM製品であったDL-80は、"DAPHON"=大風ブランドの型番E20DLなるペダルと基本的に同一のものであり、特別な工夫や追加の仕様は実装されていませんでした。 (つまり、相手先ブランド名と型番だけが貼り付けられた黒い筐体のもの。インターネット上で検索すれば、世界中に同様なペダルが流れていることがわかります。)
これに対してAR20DLは、RE-J Projectオリジナル仕様である筐体の軽量化、塗装色の変更、調整ノブの配置の変更といった外観・構造面での拡張仕様が実装されているだけでなく、RE-J Projectにおいて『音』に関する更なる改良を行なう素材としての工夫も施されているRE-J Project向け専用供給品であり、モディファイの対象となる基本ペダルであるという点が大きく異なります。
この作業の過程で、DM-2,3と同様に太くて暖かい音色を実現することはもとより、AD-80,900といった高い電圧で駆動させるアナログディレイのような音の安定感を与え、エフェクトON/OFFにかかわらずパワフルにアンプを駆動できる能力を持たせる改良方法が見つかりました。
この結果、いまだに人気のある日本製ヴィンテージアナログディレイの音の利点を再現しつつ、現代において多くの方から寄せられる共通的な改良要望である音の明瞭感が幾分加わり、ディレイ音そのものについては古典的日本製アナログディレイよりも音のこもり(高音域の遮断)が抑え(つまり少しだけ高音を持ち上げ)られ、リピート音とその減衰の傾向はより自然でさわやかなものとなりました。 この調整の結果と日米での好みの差を考慮し、ヴィンテージライクな音色の好まれる米国向けにはシンプルな改良にあえて留めてAR20DL basicを提供し、繊細な音色にこだわる日本のみなさんには当初の構想どおり高度に調整を施したAR20DL/Pro+を提供することとしました。
すなわち、AR20DLを母体として基本的な改良を施したモディファイ済み完成品としての呼び名の一つが『米国AnalogMan向け / AR20DL basic 』であり、AR20DL basicを更に調整しカスタマイズした私にとっての完成品の呼び名が『日本国内向け / AR20DL/Pro+』だと言えます。
AnalogMan/RE-J共同企画、RE-JオリジナルANALOG DELAYペダルAR20DL/Pro+
Produced / Modified by RE-J Project. AR20DL basic & AR20DL/Pro+
そして、画像からおわかりいただけるように、RE-J Projectによる『良い音への修理』品であることを示すため、私の誇りとも言えるステッカーの貼り付けがなされ、仕上げとして今回の新たなプロジェクトのために私が企画とデザインを行った金属製の『Sun Face』バッジがつまみの間に配置されています。 結果として、当初はヴィンテージライクな渋いものをイメージしていたのですが、思ったよりゴージャスな感じになってしまいました。
そして、これらの改良を正しく実装した後、アナログディレイペダルから最良の音を得るために非常に重要な仕上げの作業、『BBDと組み合わせた綿密なトリマー調整』が行なわれています。 ちなみに、E20DLではこの肝心なトリマー自体が省略され、固定の抵抗が実装されており、BBDの能力が不足していたこともあって、ディレイタイムを延ばすほど不要な発振音が混入してしまう状態でした。
ペダル全体の音を表さないので、個別の部品の紹介をあまり積極的に行っていない私ですが、大風さんの協力の一部として紹介しますと、信号圧縮伸張ICには初期型DM-2などに使われていた(ほぼ)絶版品の貴重なNE570、基本の音を通過させているのはもちろんJRC4558D、音の完成度を高めバランスの良い音を得るのに寄与しています。
E20DLに使われているその他の部品は、BOSSの20年前のペダルに匹敵する音の要素、ヴィンテージペダルに近い音のニュアンスを持っており、少なくとも現在市販されているBOSS,Ibanez製のペダルよりも、ペダル自体の音は濃密で音抜けも良い状態だと言えます。 ハイテク技術と先進の部品を逐次採用して生産・復刻される日本メーカーの最新機種よりも、20年前に近い技術をベースに生産された部品を用いて手作業で生産されたE20DLのほうが、古典的アナログ回路を活かせる結果になってしまったのだと思います。
もちろん、モディファイの母体となるAR20DLもこの特徴を継承しており、米国AnalogMan/Mikeのほうでは、音に関する調整をあえて最低限にとどめ、ヴィンテージペダルのニュアンスを多く持つAR20DL basicをリリースしますが、私のほうでは当初からの構想どおり、『良い音への修理』音抜けチューンを万全に行い、このペダルが歪みペダルとアンプの間に配置されて音作りを行うケースを強く意識し、豊かな音の広がり感、暖かい音のニュアンス、アンプを鳴らし切る能力を兼ね備えたAR20DL/Pro+仕様とします。
なお、AR20DL/Pro+は音抜けチューンの施された電子式スイッチ回路であり、トゥルーバイパスではありませんが、歪みペダルとアンプとの間に配置して使われる場合、電子式スイッチ回路上のバッファーはパワフルかつ絶妙な働きをし、一般的な使用状況においてはストレスを感じるような音の劣化は存在しないよう調整されています。
私は、アナログディレイペダルを使う最大の利点が、『歪みペダルの音を空間的に広げる使い方』にあると考えますので、AR20DL/Pro+単体でも私のモディファイ作品が持つと同次元・同水準の音をそもそも持っていますが、手前に配置された歪みペダルから送り出されるパワフルな信号を、ディレイ音のON/OFFにかかわらずアンプに効果的に伝達できるような工夫も施されています。
実は、日本の『台風』という言葉は欧米のtyphoonから来ているのですが、欧米のtyphoonという言葉の語源は欧米から見てさらに東の中国福建省・台湾地区での古来の台風の呼び名『大風』から来ているという説があります。 地球を一周した言葉『大風』→typhoon→『台風』、今度は大風発のAR20DLが、RE-J Projectのある日本で改良・発達し、AnalogManのある米国に向かい、地球を逆周りに進行していきます。
なお、米国AnalogMan向けのAR20DL basicは、日米のニーズの違いから、AR20DLをベースに最低限の調整の施されたものであり、AR20DL/Pro+のモディファイの一部を省略したものです。 (大音量が許容され、Fenderアンプが主流の米国においては、鮮明な音や繊細な倍音のニュアンスにこだわるよりも、そもそも豊かな音が引き出せていればそれでよいという感覚があるためです。)
根強いアナログディレイ人気のある米国のほうでは、スローな楽曲のテンポ感と相性のよい400msec程度の遅延時間を要望する声が実に多くよせられていました。 標準品のほうでもクロック回路の調整次第では350msec程度まで音を損なうことなく対応できるのですが、さすがに400msec前後では不要なノイズ音が重畳してしまい、肝心の音のほうが犠牲になってしまいます。 やはり、正攻法で音と機能を両立させるためには信号遅延用BBD部分の増強が欠かせないため、選定されたBBDを用いて実装方法の工夫と改良を重ねた結果、この仕様を提供することが可能となりました。
また、松下製BBD(MN3005)の実装と周辺回路の調整を行い、ペダルの駆動電圧を12Vや16Vはもちろん最大18Vまでも対応させることが可能です。こういった高電圧にて駆動されるアナログディレイならではの信号レベルの上限に余裕のある音を必要とされる場合、またはAC電源で駆動されているアナログディレイ装置(例えばラック型ならYAMAHAのE1010など)の代替を必要とされる方には、このMN3005実装+駆動電圧の拡張仕様はひとつの解決策となり得ます。
参考までに、米国で伝説となっているMAXONのオリジナルAD-80では9V電池を2個使用して18Vを得て、これを回路内部で12Vに電圧を下げて駆動していました。AD-900は専用の12V電源で駆動されています。 これらのペダルでは、基本的にMN3005(後期型AD-900ではMN3008)が使われています。 DM-3やAD-9ではMN3005を低電圧仕様に改良したMN3205が使われていますので、基本的に9V仕様のペダルしか存在しません。
しかしながら、RE-J Projectの活動自体、通常の『良い音への修理』モディファイ作業の待ち期間が3ヶ月近い不本意な状況に変わりはなく、これを非常に心苦しく思っていることもあり、当面のところこの待ち期間の短縮・挽回に注力したいと思っています。
このため、AR20DL/Pro+のご依頼をいただいた場合の納期は、原則的にはモディファイの作業待ち期間と同等となりますが、今後の方向性としては、到着順に順次進めている通常のモディファイ作業とAR20DL/Pro+への拡張作業とは分離され、AR20DL/Pro+の納期のほうが逐次短縮されることになると思います。
なお、AR20DL/Pro+はその開発コンセプトから、私の提供するモディファイ作品と組み合わせていただくことがベストであり私の希望するところでもあります。 RE-J Projectのモディファイの効果を体感しておられない場合、すなわちいかなる市販品とも次元の違う音をご存知ない場合、AR20DL/Pro+の真価を充分ご理解いただけない可能性がありますので、はじめてのオーダーがAR20DL/Pro+となるケースは原則としてお受けできないと思います。
また、AR20DL/Pro+はTS-9/808/Silverなどと同様に店頭に並ぶことはなく、ある種貴重なペダルともなります。 RE-J Projectの当初からの理念により、オークションへの出展の回避に最大限のご協力をお願いいたします。
理想とするところは、『AR20DL/Pro+に弾く楽しさを見出していただける方』への直接提供となります。
AR20DL/Pro+ の提供は中止させていただきました。
注意:これは、AR20DL/Pro+入手待ちリストへの単なる登録であって、正式なオーダーではありません。 正式なオーダーは本体が準備できた後に、私からお送りしますメール連絡に添って行って いただくこととし、正式オーダーの際に、その他の情報を相互に連絡する流れとなります。
この質問に対する私の個人的意見として、商品が実に豊富な両国における『お店では』音そのものよりも基本的なブランドイメージが先行する状況になっていること、残念なことに最近では、楽器の正しい説明をできるお店や人が次第に少なくなっているように思われること、逆に『インターネット上では』実に多くの情報が得られるため、目的のものをお店より早く・安く買い求めることができることなどを説明し、これらの両国では単に商品をたくさん流通させたとしても、そう簡単にはユーザーに選ばれ買ってもらえない状況にあることをお知らせしました。
また、こういった状況を考えると、自分達の作った音をより魅力的にする工夫をし、オリジナリティーとブランド力を同時に高められるようなアイディアを盛り込み、大量生産・大量販売を行う大型欧米メーカーには真似のできない『古典的アナログ技術を活かした製品作り』を続けることが強みであり、少なくとも日米両国にはそういった方向で展開をしないと、価格主体での競争力だけでは厳しいと思うと進言しました。
私にとっての大風さんは、この時点で既に 『AnalogMan/RE-J アナログ連合』 の一員のように感じられていました。
実は、大風さんの工場の生産ラインで見かけた製作途中のコーラス基板には、我々がずっと探し求め買い続けていた良い音のする松下製BBDが偶然使われていたのです。 もちろん、このような貴重な部品が必ず使われているわけではなく、部品の持つ音の違いを彼らが意識していたわけでもなく、単なる市場流通在庫を格安で仕入れ、偶然使っていただけです。 わずかな調整で、20年前の日本製アナログ黄金時代のBOSS,MAXONに匹敵する『アナログ』な音を持つコーラス基板が、欧州向けの『入門者用ペダル』に組み込まれ出荷されていくのかと思うと、とても残念でやるせない複雑な気持ちになりました。
アナログを求めての私の旅 『Analog Trip』 は、米国に向けて通算3回、中国に向けて1回、まだまだ続きそうです。