True Bypass / トゥルーバイパスとは

3回路(ステレオ型であれば4回路)の機械式(フット)スイッチによって、エフェクトOFFの際にペダル内部のいかなる電子回路にも接続されない状態(入力ジャックと出力ジャックが直結されたのと同じ配線状態)を作ることによって音の劣化を避けながら、音声信号を(音の面ではなく、配線の面において)完全にバイパスさせる手法を 『 True Bypass / トゥルー(真の)バイパス 』 と呼びます。

以下で詳細に解説する、機械式(フット)スイッチを使ったスタンダードバイパス方式で生じる音の劣化や、電子式切り替え回路を通過する際に生じる音の変化を避けるために利用される手法であり、電子式切り替え回路のまま残っているものをトゥルーバイパスと呼ぶことはありません。(比較的新しい手法なので、Vintageペダルのオリジナルのもの大半はスタンダードバイパス方式です。)



トゥルーバイパスのメリット

  • エフェクトOFFの際、ギターとアンプ直結の時に限りなく近いニュアンスを得ることができます。
  • 多数のペダルを直列で接続した場合でも、基準となる生音*1が容易に得られます。

トゥルーバイパスのデメリット

  • エフェクトON/OFFでの音質の差や音量の差が大きくなりやすく、個別のペダルの設定を綿密に行う必要性が生じます。
  • エフェクトON/OFFでの切り替えノイズがでやすくなり、音切れの可能性が生じます。
  • 小さなライブハウスでの演奏やレコーディングでは、機械式フットスイッチならではの「ガチャ」という音が支障になる場合があります。
    • 入力ジャックと出力ジャックが直結されたのと同じ配線状態にはなりますが、完全に音を伝達できるかどうかは内部の配線やスイッチの状態に依存しますので、音の劣化がないとは断言できません。機械式スイッチは、磨耗も進行し接触不良も生じます。

電子式切り替え回路のメリット

  • エフェクトON/OFFでの音質の差や音量の差が抑えられ、個別のペダルの設定が比較的気楽に行えます。
  • エフェクトON/OFFでの切り替えノイズがほとんどなく、音の切り替え時間も充分素早いと言えます。

電子式切り替え回路のデメリット

  • エフェクトOFFの際、電子回路を通過することによる音の変化(必ずしも劣化とは言えない)が生じます。
  • 多数のペダル(一般的には5台以上)を直列で接続した場合、音の変化同士が重なりあうため、基準となる原音*2を把握しにくくなったり、音の変化を劣化と感じる場合があります。
    • 電子式切り替え回路を採用する多くの市販品(とりわけ新しいものほど)では、音の重心が高くか細い音になる傾向があるため、高度なギターやアンプをお使いであればあるほどアンプ直結の音との差が大きくなり、音の変化を劣化と言わざるを得ない状態になります。
    • ただし、音声信号が電子回路を通過しているほうが長い配線の影響を避けられるためノイズに強く、アンプ側の調整で音の変化(劣化)を補整できれば、ステージ上での演奏において有利に働くことになります。

エフェクトのON/OFF切り替え方法

機械式(フット)スイッチを使ったもの

金属の丸い突起のついた機械式(フット)スイッチによって、エフェクトのON/OFFを行う方式です。ただし、内部の構造によって例外的実装や歴史的変遷などが存在するため、外観や機種名だけでは一体どの方式が採用されているのか判断できません。

  • 例外的実装(例):Maxonの新9シリーズでは、フットプレートの下に内蔵された特殊な3回路小型スイッチによりトゥルーバイパス方式が実現されており、見た目だけでは電子式切り替え回路の元祖・旧9シリーズと区別がつきません。また、初期の復刻版OD-9などでは、2回路小型スイッチによりスタンダードバイパス方式が実装されていたのですが、電子式切り替え回路でないことだけでトゥルーバイパスと呼称してしまった時期があり、新9シリーズ全てがトゥルーバイパスではありません。
  • 歴史的変遷(例):Maxonの古典箱型シリーズ(OD808,D&Sなど)の最近のものでは、金属の丸い突起のついた機械式フットスイッチ(実は1回路のもの)が使われていますが、これは外観だけであり、内部では電子式切り替え方式が採用されています。しかし、ほとんど同じ外観を持つ旧型の元祖品では、2回路の機械式フットスイッチによるスタンダードバイパス方式が採用されていました。

スタンダードバイバス

  • 2回路の機械式(フット)スイッチを使って、1回路でエフェクトのON/OFFを行わせ、もう1回路でON/OFF表示用のLEDの点灯を行わせる方式です。
  • LEDが省略されている場合(Vintage MXRなど)やワウにおいて、1回路の機械式(フット)スイッチを使ってエフェクトのON/OFFだけを行わせる場合も含まれます。
  • エフェクトOFFの際でも、エレキギターからの信号がエフェクト基板の入力側電子回路にぶらさがったままになってしまうため、ギター直結の時よりも音量が下がったり、高音が劣化する(こもった音色になる)といった現象を引き起こします。
    • ワウは、音量低下と高音落ちが激しいペダルに分類されます。トゥルーバイパス加工だけを行うと、エフェクトON時の音量不足を感じやすくなります。

ミレニアムバイパス

  • 2回路の機械式(フット)スイッチを使って、2回路両方とも用いてエフェクトのON/OFFを行わせ、エフェクトの切り替えに関しては(3回路のスイッチを使わずに)トゥルーバイパスを実現します。
  • このままではON/OFF表示用のLEDの点灯が行えないので、エフェクト基板から出力される微小な電圧を判定する回路を出力回路にぶら下げ、間接的にエフェクトのON/OFFを検出しON/OFF表示用のLEDの点灯を行わせる凝った方法です。
  • 音声信号の面では、ミレニアムバイパスはトゥルーバイパスと同等です。
  • スタンダードバイパスのペダルに回路を追加してミレニアムバイパスにすることが可能ですが、この作業の手間を考えると、あっさり3回路の機械式(フット)スイッチに交換してトゥルーバイパスにしたほうが得策となります。

トゥルーバイパス

  • 3回路の機械式(フット)スイッチを使って、2回路を用いてエフェクトのON/OFFを行わせ、もう1回路でON/OFF表示用のLEDの点灯を行わせる方式です。
  • 前述のように、ミレニアムバイパスと呼ばれる方式もトゥルーバイパス機能を実現しています。
  • 同じ機種なのに、世代の違いによってスタンダードバイパス、ミレニアムバイパス、トゥルーバイパスが混在しているケースがあります。
  • 表面的に電子式切り替え回路の外観ながら、リレーと呼ばれる電磁メカ式切り替えスイッチを使ってトゥルーバイバス機能を内部で密かに実現することも可能です。

電子式切り替え回路を使ったもの

一般的には、フットプレートの下に内蔵された機械式の小型スイッチ(通常押し下げた時にだけONとなるモーメンタリー型と呼ばれるスイッチ)を押し下げ、このON信号によって電子式切り替え回路を動作させ、以下のいずれかの方法によってエフェクトON/OFFの状態を作り出す方式です。(BOSS BD-2,DS-1他、Ibnez TS-9など)

例外的には、金属の丸い突起のついた機械式(フット)スイッチ(ON/OFFが交互に切り替わるオルタネイト型と呼ばれるスイッチ)を切り替え、このON/OFF状態に応じて電子式切り替え回路を動作させ、以下のいずれかの方法によってエフェクトON/OFFの状態を作り出す機種もあります。(Maxon 新OD808,D&S,AD-900など)

  • この方式の場合、入力信号はエフェクトON/OFFいずれの状態でも必ず電子回路を通過します。このため、電子回路自体が持つ音の特質がエレキギターからの信号・基本の音質に変化をもたらしてしまうため、アンプ直結の時よりも音の質感(音の豊かさ、音抜けなど)に不満を感じる場合があります。
  • 音の変化(音の質感への不満を感じる要素)は、ペダルの世代が新しければ新しいほど多く、複数台のペダルを連結すればするほど顕著に感じられるようになります。
    • ペダルの機種、生産時期、個体による差は無視できないほど大きいと言えます。
    • 古い時期のBOSS・Maxonなどにはなんら不満を感じないものも存在します。

エフェクトON/OFFで通過する回路自体を切り替える

  • エフェクトONではエフェクト回路をくぐった音を出力に接続し、エフェクトOFFではバイパス用の原音(音を加工しない回路を通過した音)を出力に接続する方式、エフェクト音とバイパス音の信号を電子回路で選択切り替えする方式です。
  • 歪み系の全ての機種でこの方式を採用しています。(BOSS BD-2,DS-1他、Ibanez TS-9、Maxon 新OD808,D&Sなど)

エフェクトONの際に、効果音を原音に上乗せする

  • 基本的に、原音(音を加工しない回路を通過した音)は常にエフェクト回路から出力されており、エフェクトONではエフェクト効果を出すための回路をくぐった信号音、すなわち効果音も出力に接続(原音に上乗せ)される方式、効果音のミキシング方式です。
  • コーラス、ディレイの多くの機種でこの方式を採用しています。(BOSS CE-2,CE-5,DM-2,DM-3他、Ibanez AD-9、Maxon AD-900など)

トゥルーバイパスと『良い音への修理』の関係

トゥルーバイパス加工の特質

  • トゥルーバイパス加工の際、配線の流し方や接続場所に充分な注意を払わないとノイズが乗りやすくなったり、信頼性が損なわれます。エフェクトペダルの機種によって最適な配線方法は異なります。
    • スタンダードバイパス用の余分な部品が回路に搭載されていたり、配線にそもそも問題がある場合があり、基本的にはトゥルーバイパス加工に合わせて回路の追加調整や配線の最適化が必要となります。
    • 電子式切り替え回路のものをトゥルーバイパス加工する際には、エフェクト回路をONに固定する作業や、LEDの点灯に関する追加調整・配線作業、場合によってはエフェクトON/OFFでの音量差を補正するための回路調整が必要となります。
    • エフェクト回路の入出力部分に充分な配慮をしないと、トゥルーバイパス加工によってエフェクトON/OFFでの切り替えノイズが実用に耐えないほど目立ってしまう場合があります。(スタンダードバイパスよりも敏感になります。)
  • 回路上の音に関係がある部分を調整する作業よりも、信頼性やノイズを考慮し最適な配線を施すほうがはるかに多くの時間を要し困難な作業となります。どんな信号を扱っている配線であるかによって、最適な配線経路や配線方法は異なります。

『良い音への修理』との組み合わせ方

  • 電子式切り替え回路のデメリットは、『良い音への修理』で解消させることが可能であり、多数のペダルを直列で接続しても音の変化がさほど気にならなくなります。
  • 電子式切り替え回路を持つ多種多様なペダルに対する『良い音への修理』では、エフェクトON/OFFいずれの音に関しても可能な限りの調整を行いますので、結果として以下のようなメリットが生じます。
    • エフェクトOFF時の音は劣化(音やせ、高音落ち)がほとんどなく、豊かなニュアンスを持つものになります。
    • エフェクトON時の音に関しては、ディレイやコーラスでは原音が太く豊かなエフェクト効果を感じるようになり、歪みペダルでは(とりわけ歪みの量が少ない際)音の芯が太く抜けの良い音に感じるようになります。
  • トゥルーバイパス加工だけではエフェクトOFFに関するメリットしか実装できず、ペダル自体の音への不満が解消されないため、『良い音への修理』を行った上での次のステップがトゥルーバイパス加工だと言えます。
  • 電子式切り替え回路のメリットを活かし、複数台のペダルを使っても容易に生音を得る方法として、トゥルーバイパス回路を搭載したエフェクト切り替えBOXを導入し、エフェクト切り替えループ側に複数台のペダルを接続・配置することをお勧めしています。強引に個別のペダルを改造するよりも容易に目的が達せられ、将来的な拡張性の面でもメリットが大きいためです。

*1 生音:一般的には、楽器そのものから発せられる音を指しますが、この解説の中では、ギターの音をアンプでさほど加工せず再生される音のことです。
*2 原音:この解説の中では、ギターの音がエフェクトの電子回路中の音を加工しない回路側を通過した後、アンプで再生される音のことです。

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Last Updated: 2009-03-24 (火) 17:53:44 (3189d)